家族や親族が故人のそばにひと晩寄り添い、故人の思い出を振り返り、別れを告げるひとときである「夜とぎ」。その間、棺のそばでロウソクと線香を絶やさないように、交代で番をします。
都会では、住宅事情のこともあってなかなか自宅で葬儀をすることは難しくなっています。だから昔のように、家族で落ち着いた雰囲気の中で夜とぎがしたいと望んでも、叶わないことも多いのです。
斎場で夜とぎをしたくても、充分な宿泊施設を備えたところは少ない。だから、途中で家族は自宅に戻らざるをえなくなっています。これは、「半通夜」と呼ばれていますが、本来の夜とぎの意味を満たしているとは言えないですし、これでは家族もゆっくり故人との時間を過ごすことができませんよね。
私たちは、幸い宿泊施設を備えた良い業者にめぐり会い、父の夜とぎを悔いなく行うことができました。
その夜とぎの最中にいろいろなことを考えました。父が私たち家族みんなを守っていてくれたことを、亡くなってからひしひしと感じること。そしていなくなったこれからは、私たちの世代が次の世代を支えていかなくては…と思ったのです。
そんなことを妹に話すと、「同じことを考えた」と言ってくれました。そしてこれからのことを話し合い、そのことでさらに絆が深まったような気がしました。私と夫と妹夫婦と、そして棺の中の父だけがいるという空間だったからこそ、じっくりと本音で語り合うことができたのだと思います。
夜とぎは、故人とのお別れのためでもあり、残された者たちがこれからの出発を誓うためでもあるのかもしれませんね。